前回に引き続き「NIPPONIA 白鷹 源内邸」の宿泊レポートのブログ記事その2です。
今回は敷地内にある建物やディナーを紹介していきます。
記事内のリンクには一部アフィリエイト広告を含みます
今回の宿泊中のスケジュール(モデルプラン)
1日目 |
---|
12:15 出発 |
13:30 道中で昼食 |
15:00 チェックイン |
15:30 ルームツアー |
16:00 敷地内を散策 ⇐いまココ! |
18:00 ディナー |
20:00 入浴 |
21:30 夜の敷地内を散策 |
23:00 就寝 |
2日目 |
---|
7:00 起床 |
7:15 朝風呂 |
8:00 朝食 |
9:00 部屋でくつろぐ・身支度 |
10:00 チェックアウト |
1日目(続き)
16:00~ 敷地内を散策
普段は温泉旅館やオールインクルーシブの宿に行くことが多い私たち夫婦は、ディナー前の時間帯といえば、温泉に浸かっているか、アルコールを飲んでいるかのどちらかなのですが、今回の「NIPPONIA 白鷹 源内邸」は温泉旅館でもオールインクルーシブの宿でもありません。
そこで、美しい日本の原風景が売りの「NIPPONIA 白鷹 源内邸」に来たからには、建物や庭園の風情を楽しまなければもったいないというよくわからない貧乏気質を発動させ、雨が降ったりやんだりする中で敷地内の散策に出かけます。
ここで、敷地内の建物の配置図が再登場。
とりあえず敷地内にある建物(母屋と「紅の八塩」を除けば4つ)の外観くらいは写真におさめておきたいということで夫と意見が一致したので、各建物周辺を一通り見て回りました。
せっかく各建物の外観を写真におさめたので、公式の予約サイトである一休さんのページからも画像をお借りしながら、他の客室について簡単に紹介していきます。
ちなみに、それぞれの客室の名前には、白鷹町の名産品である「紅花」にちなんで、全てに【紅】の漢字が入れられています。
「艶紅(ひかりべに)」(母屋)
母屋には、「艶紅(ひかりべに)」と「真紅(しんく)」と2つの客室が入っています。
このうち、「艶紅」の入口は、母屋の玄関を入って廊下の左側にがあります。
「艶紅」は、庭の景色を楽しめるリビング+約100年前に奥山一族の奥山源太郎がこだわり抜いて造り上げた洋室をベッドルームにしている客室です。「艶紅」は、「紅の八塩」とともに推されている客室なので、「NIPPONIA 白鷹 源内邸」の中でも、1,2番目に宿泊予約が多い客室(のはず)です。
洋室の壁紙や縁のモール材、天井、窓枠、寄木細工を施した床材などは大正10年当時からのものとのことです。奥山一族の当時の豊かな生活ぶりを想像しながら趣のある客室の雰囲気を楽しみつつ、一味違った非日常感を味わえます。
「真紅(しんく)」(母屋・旧金庫蔵)
同じく母屋に入っている「真紅(しんく)」の客室は、母屋の玄関を入って廊下の突き当りにあります。
「真紅」の客室は、もともと金庫蔵だった建物を、メゾネットタイプの客室にリノベーションしたものです。京町家さながらの階段箪笥が当時のまま残されていたり、昭和初期の耐火金庫があるなど、歴史の重みが感じられる造りになっています。
リビングに備え付けのソファーがもともと使用されていた昭和中期頃のソファーを当初の技法に倣ってリペアしたものだったり、テーブルも昭和後期の天童木工製など、個人的にはインテリアを含めて「真紅」が「NIPPONIA」イズムが一番強く現れている気がします。
「莟紅梅(つぼみこうばい)」/「中紅花(なかくれない)」(旧武具蔵)
母屋の建物の東側はす向かいには、もともと武具蔵だった建物(大正13年築)があります。
本当は旧武具蔵の外観写真を撮影するだけのつもりが、スタッフさんのご厚意で、当日は宿泊客がいなかった旧武具蔵の中の客室を見せていただけることに!せっかくなので、ご厚意に甘えて旧武具蔵の内部を見学させてもらいました。
建物の中に入ると、重厚感がハンパない蔵戸+階段箪笥+カリモクのヴィンテージチェアが出現し、客室に入る前から圧倒される展開に。
旧武具蔵には、「莟紅梅(つぼみこうばい)」と「中紅花(なかくれない)」というメゾネットタイプの客室が2つ設けられていて、蔵戸を通ってすぐ右に「中紅花」の入口があり、蔵戸を通って奥に進んだ突き当りに「莟紅梅」の入口があります。
重層的な構造になっているのは、武具庫の中の温度を管理するためだったとのことです。
客室の基本的な造りは「莟紅梅」も「中紅花」も一緒なので、今回は「莟紅梅」の客室内を見学させてもらいました。
2階のベッドルームは写真撮影に失敗したので、画像をお借りしています。
「莟紅梅」は、「紅の八塩」の客室をコンパクトにした印象の客室で、2人での宿泊であれば「莟紅梅」で十分快適に過ごせると思います。ただ、「紅の八塩」の窓から見える竹林の景観があまりに圧倒的なので、もちろん価格差しだいですが、個人的には「紅の八塩」を選択するかな。
「紅絹(もみ)」/「紅葉(もみじ)」(旧吹抜け蔵)
母屋を挟んで、「紅の八塩」の反対側には、天井高7メートルを超える、旧吹抜け蔵(旧穀物庫、明治35年築)があります 。
建物の外観写真を見ても、天井が高いのが一目でわかります。
旧吹抜け蔵の建物の蔵戸前のスペースは共有ラウンジになっていて、スノーピーク(Snow Peak)のアウトドアチェアが設置されています。
この旧吹抜け蔵には、天井の高さをそのまま活かしたリノベーションが施されていて、「紅絹(もみ)」と「紅葉(もみじ)」の2つの客室が建物内に設けられています。
客室内には、天童木工のヴィンテージソファーが設置されているなど、ここもこだわり満載です。
「紅絹」と「紅葉」の客室も一般的な宿泊施設にはないユニークな造りをしているので、非日常感を求めて宿泊部屋を選ぶならこの部屋もかなり良さそうです(というか、もし次に私が泊まるならここにしたいです)。
「紅掛藤(べにかけふじ)」(旧書斎)
「紅掛藤(べにかけふじ)」は、昭和60年に建設された平屋の旧書斎をリノベーションしたシングルルームです。
障子戸は、白鷹名産の深山和紙を太鼓張りにしたもので、ソファーは「紅の八塩」に設置されていたものと同じです。
「紅掛藤」の建物は九代 奥山久太郎が執筆活動に勤しんでいた場所とのことで、長期滞在の宿泊利用がおススメされています。
18:00~ レストランでディナー
歴史と風情を感じる建物群を一通り見て回って部屋で一息ついたら、お待ちかねのディナータイムです。
ディナーの会場は、敷地内にある5つの建物の中でも最も古く(明治30年・同35年築)、かつては味噌蔵として使用されていた建物をリノベーションした「ダイニング 纏(まとい)」です。
「莟紅梅」の室内を見学させてもらった際に、スタッフさんに図々しくも、「ディナー前にレストラン内の写真を撮らせてもらってもいいですか?」と確認したところ、「18時少し前にレストランに来ていただければ問題ないですよ」との返事をもらったので、他の宿泊客が来る前に「ダイニング 纏」に1番乗りで到着しました。
ただ、ディナーの時は、私も夫もレストラン内のほうに関心が向きすぎてて、入口の正面写真を撮影し忘れてしまっていたので、入口の正面写真は2日目の朝に撮影したものです(笑)。
建物の玄関をくぐると、重厚感たっぷりの大きな蔵戸が2つ並んでいて、旧吹抜け蔵の建物の蔵戸前と同じように、スノーピーク(Snow Peak)のアウトドアチェアが設置されていました。
左の蔵戸がレストランのホールにつながる出入口になっているので、こちらを通っていざ入場です!
レイアウト、インテリア、照明...何から何まで計算し尽くされたかのようなオシャレな空間!
何よりもこれがもともとは明治時代に建てられた味噌蔵ということにビックリです!
もともとは古い味噌蔵なのに、建物内部は北欧インテリア風のイメージもあり、漆喰の壁も白を基調としたレストランの落ち着いた雰囲気を際立たせています。
2階にもスペースがありますが、こちらは基本的にはイベントなどの際に開放しているそうです。
レストラン内を一通り写真におさめて満足したところで、テーブルに着席して、いよいよディナースタートです!
肝心のディナーですが、レストランの雰囲気にピッタリの、フレンチをベースに、地場の素材と食文化を取り入れた現代的なコース料理です。
「ダイニング 纏」でのディナーは、白鷹町や置賜エリアの伝統野菜や果物を主役とし、置賜地方で受け継がれてきた伝統食を取り入れた「ローカルガストロノミー」を提供しています。
地域の風土、歴史、文化を料理に表現すること(すなわち、地域のことを総合的に学び、サスティナブルな食環境を考え、その上で「自分の料理に地域を表現していきましょう」という考え方)
(出典:一般社団法人ローカル・ガストロノミー協会公式ホームページ)
その中で、当時の米沢藩内で作り上げられた「かてもの」の文化も、シェフの横澤充洋さんによって現代的に解釈し直され、敷地内で採れる山菜など、身近な恵みをふんだんに取り入れて、「ダイニング 纏」なりに置賜・白鷹の地を表現した料理として提供されています。
米沢藩九代藩主 上杉鷹山が提唱した、飢饉などで食糧不足になった際に主食を節約するために考案された主食の代用食となる食物
(出典:「NIPPONIA 白鷹 源内邸」公式サイト)
私たちは、不勉強のあまり、このディナーの時点では「ローカルガストロノミー」も「かてもの」の文化もよく理解していなくて、このブログ記事を書くにあたって軽くリサーチしたことで、置賜白鷹の伝統野菜や敷地内で採れた食材が、美味しく目でも楽しめる料理の数々になって提供されていたことの意味がよくわかり、横澤シェフの腕前にあらためて脱帽。。
また、ディナータイムのドリンクも、ソムリエの資格を持っている横澤シェフ(これもあとで知りました。。)が料理とペアリングしてくれたものが提供されていました(こちらも宿泊プランに含まれていたので、別料金はかかりません)。
アルコールドリンクには山形の地酒やワインが提供されていて、ゲストに最高のローカルガストロノミー体験を演出するために一切妥協しない姿勢がうかがえます。
お酒が飲めない方や子どもには、ノンアルコールドリンク(クラフトコーラ、ジンジャエール、季節のソーダ(イチゴ・あかすもも・しそ)、100%リンゴジュースなど)が提供されていて、ここでもローカルガストロノミーを体現しています(季節によってドリンクの内容変更あり)。
前置きが長くなりましたが、ここからはディナーで提供された繊細で美しい料理の数々をペアリングされたドリンクと一緒に紹介していきます。
スープ
まずは、スープ料理からディナーがスタートです。
スープは見るも鮮やかな緑色の「キュウリとシソの冷製スープ」です。スープの中央に浮かべられたグラニテはキウイときゅうりをベースにしたものとのことです。しかも、スープに使用されているキュウリは、源内邸の敷地内にある庭で栽培し収穫した通常のきゅうりに加えて、白鷹町畔藤地区で明治時代以前から栽培されてきた「山形おきたま伝統野菜」の「畔藤(くろふじ)きゅうり」も使っているそうです。
スープにペアリングされたお酒は、山形県東置賜郡高畠町にある米鶴酒造が製造している「Cotton Candy(コットンキャンディー)」というにごり純米酒です(少しだけソーダで割ってあります)。お酒の薄いピンク色は酵母の色なんだそう。
こちらのお酒は、楽天とYahooショッピングで入手可能です。
1品目からローカルガストロノミー全開の料理&地酒ですが、私たちはこの時はまだローカルガストロノミーの凄さをよくわかっていなかったので、料理やお酒の説明をおざなりに聞いて、爽やかなきゅうりの味わいとグラニテの食感が際立つスープ&のどごしがいい日本酒を体験して、ただただ味覚をフル活用していました(笑)。
しかも、スタッフさんが日本酒のおかわりを勧めてくれるものだから、宿泊料金に含まれていることをいいことに図々しくも夫とともに最初の日本酒からおかわりしちゃいました。
オードブル(前菜)
1品目からテンションが上がってしまう繊細で美しく手の込んだ料理でしたが、2品目で高まる期待がさらに引き上げられます。
2品目は、旬を迎えた20種類の山形野菜を使用したテリーヌ。こちらも見るも鮮やかな逸品です。しかも、これだけの野菜を、野菜が本来持つ風味を楽しめるように、ゼラチンを使わずに野菜の力のみを利用してギュッと固めているそうです(凄すぎてもはやどの程度凄いのかすらわからない境地...)。
黄色味がかったソースは白鷹町産の紅花のソースで、花塩は山形県庄内地方、炭塩は宮城県七ヶ浜町のもの。白胡椒は荒く砕かれています。
これを白鷹の地でいただける贅沢っぷり。
私の語彙力ではあまり伝わらないとは思いますが、20種類の野菜それぞれの風味が複雑に混ざり合いながらも凝縮された旨味が味覚に働きかけてくる感じとでもいいましょうか。これまでに培った経験と調理技術の裏打ちがあるからこそ作ることができる逸品という感じです。
2品目にペアリングされたお酒は、山形県鶴岡市の奥羽自慢株式会社が製造している「吾有事 純米大吟醸 尖鋭辛口 黒ラベル(生酒)」。こちらのお酒は年に48本しか製造されないため、市場にはほとんど出回ってないものとのことです。
味は雑味がなくスッキリした味わいで、今回もおかわりをいただいちゃいました。
ポワソン(魚料理)
ディナーが進むにつれて、次はどんな料理とお酒が出てくるかなと心を躍らせながら、3品目に突入です。
3品目は、金目鯛の鱗焼きです。白(カリフラワーのソース)、茶(鯛の出汁のソース)、緑(カブの葉のソース)の3色のソースは見た目にも色鮮やかです。お皿の上に絵画のように美しい料理が盛り付けられて出てきたので、料理に手を付けることがなかなかできませんでした。付け合せで飾られているのは「山形おきたま伝統野菜」の「おかひじき」です。
外側の鱗・皮のサクサク感と肉厚な身のジューシー感、そして主張しすぎないソースや付け合わせの野菜が上手くバランスをとって、繊細な味を作り上げています。
この料理にペアリングされたお酒は、山形県上山市にあるウッディファーム&ワイナリーの「プライベートリザーブシャルドネ 2017」です。
これで「美味しい魚料理+美味しい白ワイン」というパーフェクトな方程式の完成です。
しかも、ワインのおかわりとして「プライベートリザーブシャルドネ 2021」も提供され、年代の違うワインの飲み比べができるという至れり尽くせり。
ワインはやはり2017年もののほうが熟成されている分美味しく感じました。残念ながらウッディファーム&ワイナリーのオンラインショップサイトを私が確認したときには、2017年ものは在庫なしになっていました(2021年ものは、まだオンラインショップで購入できるみたいです)。
ヴィアンド(肉料理)
料理の緻密さ・繊細さやおもてなしに感動しつつ、いよいよ4品目のメインディッシュです。
メインディッシュの肉料理は米沢牛のグリルで、付け合わせに万願寺とうがらしと白鷹産のニンニクの芽が添えられています。
この料理にペアリングされたお酒は、もちろん赤ワイン!「’HAKURYU-DRY’ MASCUT BAILEY-A(白竜ドライ マスカットベリーA )」の2021年ものでした。
こちらの赤ワインは、山形県南陽市赤湯地区にある湯十分一山で栽培されたマスカットベリーAを白竜湖からの上昇気流で自然乾燥させ、糖度の高い味わい深さが特徴的な仕上がりで、南陽市のふるさと納税の返礼品にも選ばれています。
米沢牛のグリルと甘さが凝縮された赤ワインの組み合わせが優勝なのは、言うまでもありませんよね。
デザート・カフェ
最後にデザートとカフェで、初体験の「ローカルガストロノミー」を締めくくります。
デザートは、一皿の中に、オレンジ・グレープフルーツ・甘夏のテリーヌ、りんご・いちごのシャーベット、さくらんぼ・いちごのスープが盛り付けられています。
カフェは、コーヒー・紅茶・ハーブティーの3種類(ほかにもあったかも)の中から、私は遊佐町産のハーブを使用したハーブティーを、夫は紅茶を選択。
デザートもめちゃくちゃ美味しかったのは、写真を見ただけでわかっていただけますね(笑)。
最後までテンションがあがりっぱなしのまま、料理をひとつ残らず完食してディナータイム終了です。
ディナータイムで提供された料理のひとつひとつが、横澤シェフの技術や白鷹・置賜の風土などが詰まった丁寧で繊細な作品で、時間・手間やコストを優先した食材やレシピで作られている料理では味わえない、白鷹の地・「ダイニング 纏」での料理と贅沢な時間を体験させてもらいました。もちろん、料理にペアリングされていたお酒も料理との相性がバッチリです。
緻密で丁寧な準備によって提供される繊細な料理とドリンクによって、日常生活では単なる作業になりがちな食事をとるという行為・時間が、魔法がかけられたように濃密な体験に変わり、ディナーにエンターテインメントの要素すら感じました。
そして、ディナーを終えた頃には、いま置賜・白鷹の地を訪ねているという感覚をおぼえて、この地域への関心もかきたてられます。
単に美味しい料理・お酒を堪能するだけなく、緻密で丁寧な準備を通じて地域の風土が表現された料理とお酒を、想いと説明に耳を傾けつつ楽しむという「ローカルガストロノミー」、、、初体験が最高すぎました!
【続く】
コメント